インプラントに失敗した方へ
インプラント治療の失敗する場合の例示と、リカバー(再治療)について解説しています。
インプラントに問題を抱えた患者さんが多数来院
当院には、インプラントに問題(違和感、脱落、ぐらぐらする、見栄えが悪いなど)を抱えた患者さんが数多く相談にいらっしゃいます。
現在多くの一般歯科医師が、インプラント治療を行っていますが、その中でも歯周病に精通していない歯科医師がインプラント治療を行う場合、患者さんにとって大きなリスクがあります。インプラントを長持ちさせるためには、歯周病を熟知しコントロールしていかなければいけないからです。
今後も、不適切なインプラント治療が行われ続けることは避けがたい事実だとすれば、その結果トラブルを抱えてしまった患者さんを少しでも助けること、これが歯周病専門医としての責務と考えています。
⇒ 不安をお持ちの方は、お気軽にご相談下さい
インプラントの失敗の種類
まずインプラントの失敗を時間の経過で大別すると、
1. 埋入手術をしてすぐに起こるもの
2. 埋入手術をして被せ物を入れた後にゆっくりと起こるもの
に分けることができます。
埋入手術をしてすぐに起こる場合
埋入手術をしてすぐに起こる場合は、インプラントが最初から骨にくっついていないと考えられますので、原因となりうる因子を取り除いた後に再手術が必要となることがほとんどです。
しかし、もとの状態より骨の量が少なくなっているので、骨を造る処置との併用 が必要になり、より難しい治療になる傾向があります。
治療例1
インプラントの周囲が黒く見えるのは、炎症を起こして骨が溶けてしまっているからです。すでに動揺があり、排膿が確認されたので、GBR(撤去と同時に骨誘導再生術)を行い、治癒を待ち、十分な骨の量が元に戻った後に再度インプラントを埋入しました。
↑ インプラントの周りが黒く見えます。
↑ インプラントを撤去した後の状態。大量の骨が無くなってしまっています。
骨再生誘導薬剤によって骨がないところを満たします。
↑ 6ヶ月後、骨が再生されたので再度インプラントを埋め込みました。
↑ レントゲン写真で問題なくインプラントが埋入されているのが確認されます。
治療例2
初診時:レントゲン写真ではインプラント周囲の骨が吸収していることが認められます。
インプラントの動揺と排膿があったため、撤去をすることになりました。
切開して患部を目視すると、インプラント周囲の骨が大量に
失われていることが分かります。
インプラント撤去後、失われた歯槽骨を再生するGBRを2回実施し、十分な骨が再生した後、インプラントの再埋入を行います。
治療後:インプラントを再埋入し、見た目も美しく再治療が完了しました。 |
インプラントをご検討中の患者さんへ
今回のようにインプラントで失敗した後、再治療が必要となるケースが後を絶ちません。上記の写真では比較的簡単に再治療できたように感じるかもしれませんが、治療期間に2年ほどかかり、難易度の高い外科処置も必要となってきます。患者さんにとっても、私にとってもとても厳しい治療と言わざるを得ません。
特に、歯周病で歯を失ってしまった患者さんにおいて、インプラント治療を行うかどうかの判断はとても大切ですし、技術的に難しい判断になるのも事実です。インプラント治療を選択するにしても、歯周病専門医による綿密な治療計画と口腔管理が必要になりますので、ご留意下さい。
治療例3
初診時:レントゲン写真ではインプラント周囲の骨が吸収していることが認められます。
インプラントの動揺と排膿のため撤去をすることになりました。
切開してインプラント体を撤去しました。
GBRを行い、縫合して骨が再生するのを待ちます。骨が再生した後、インプラントを再度埋入予定です。
埋入手術をして被せ物を入れた後にゆっくりと起こる場合
埋入手術をして被せ物を入れた後にゆっくりと起こる場合で一番多いのは、インプラントの周りに歯周病原菌が感染して起きる場合なので、治療としては、重度歯周病治療と同じで、外科的に除菌をしたり、骨移植をしたりして進行をできるだけ食い止めるようにします。
また、他の歯に歯周病が存在する場合は、その歯の治療も同時に行い、病原菌の数をコントロールすることが大事になります。
例
このレントゲン写真は、他院にてインプラント治療を受けたところに違和感を感じ来院された患者さんをお撮りしたものです。
写真左側のインプラントの周りの骨が半分以上溶けてなくなってしまっています。治療としては、重度の歯周病治療と同じく、歯周外科を行い病状の安定を計りました。
症状別失敗の分類
症状別に失敗を分類すると
本質的な失敗(インプラント体の問題)
1)脱落
2)動揺
3)腫れ
4)出血
5)痛み等
二次的な失敗(被せ物の問題)
1)審美障害
2)清掃障害
3)被せ物の破折、脱落、動揺等
に分類されます。
治療法は、やはり、なぜ上手く行かなかったのかを正確に分析する必要があります。残念ながらインプラントは、歯と違って少しでも揺れたり、動きが出始めたならば、撤去する必要がありますので、その場合、骨を造る処置を併用して再度インプラントを埋入する必要があります。
動いてないが痛みや腫れがある場合は、抗菌薬を投与したり、外科的に徹底したクリーニングをインプラントに施すことで保存可能になる可能性があります。
また、被せ物の見栄えが悪い場合でインプラントの埋入位置が不適切な場合は、インプラントの撤去、再埋入が必要になりますし、周りの骨や歯肉が足りない場合は、歯肉や骨の移植が必要になります。
よって、インプラントの失敗は、様々な原因によって発症し、一度発症すると、その対応は、難しいものになります。それを考えると一番大切なことは、そうならないように出来る限りのあらゆる手段を予め行うことになります。
歯周病学的見地から見た場合、インプラント治療は、 Phase2 に属する治療手段になります。これは、 Phase1 の後に行う治療という意味で、他のすべての歯の虫歯、歯周病原菌除去を目的にする Phase1 に属する治療が完了した後に行うべきだと定義づけられています。
インプラント治療は、歯がないところにインプラントを埋め込むといった単純なものではなく、1人の患者さんを治療するときに用いる治療ステップの内の一つの治療手段であるので、総合的かつ綿密な患者さん単位での分析、評価が前提条件として必要になります。
インプラント治療によるリスク
インプラント手術後は、痛み、腫れ、内出血、しびれ等の可能性があります。