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歯周病と全身疾患

歯周病と全身疾患

歯周病は糖尿病心疾患をはじめ様々な病気との関連性が報告されています。ここでは、歯周病が原因となる全身疾患、その他全身疾患と歯周病の関連性について詳細に説明しています。

歯周病と全身疾患との関連性

全身疾患の中には、歯周病との関係が取りざたされているものがあります。

糖尿病

日本における糖尿病患者は、潜在的な患者数も含めると、成人の5-6人に1人という統計データが厚生労働省によって明らかにされています。

糖尿病は、網膜症や腎症等のさまざまな合併症を引き起こすことで知られていますが、歯周病もその内のひとつです。アメリカ歯周病学会も過去50年に渡って、歯周病に対する糖尿病の影響を研究してきましたが、その結果、糖尿病にかかると、歯周病になりやすくなったり、歯周病になった場合、重症化する頻度が高いということがわかっています。

また、糖尿病患者は、実際の歯周病の治療効果が上がりにくいということもわかっています。ですので、糖尿病と歯周病の両方にかかっている方は、内科の先生と連携した総合的なアプローチが必要となります。

また、「歯周病の治療をすると、糖尿病が改善するのか」といった疑問が寄せられ、実際に歯周病の治療をした後、血糖値が改善したとの研究報告が複数発表され、注目を浴びました。しかし、その後の研究では、改善しない場合も見つかり、今のところ、歯周病が治ると糖尿病が治るとは必ずしもいえないようです。

しかしながら、歯周病治療と糖尿病の治療の両立は、両方にいい影響があるのは確かなようなので総合的に治療をすすめることが、推奨されます。

糖尿病の持病があり、歯周病の治療が現状うまくいっていない、などご不安をお抱えの方は、是非一度歯周病専門医にご相談下さい。

 

早産、低体重児出産

妊娠37週以前の出産、出生時に2,500 g 以下の乳児を出産する確率が歯周病患者の場合は、4-7 倍の確率で発生することが、アメリカの研究で報告されており、日本においても同様の報告がなされています。その原因は、歯周病にかかっている場合に起きる免疫反応が出産を促すためと推定されています。

しかし、最近の研究では、必ずしもその因果関係が証明されない場合もあり、現在は、歯周病患者の場合、早産、低体重児出産の危険性が高いかもしれないといった程度の解釈になっています。しかしながら、妊娠中には、女性ホルモンの分泌の影響で歯肉が腫れ易くなりがちなので、安定期に必要に応じて、適切な治療を受けていただくことが推奨されます。
⇒ 妊娠・妊婦と歯周病のページへ(マタニティ歯周病外来)

心血管系疾患

その昔、アメリカで有名な雑誌の表紙をかざったショッキングなタイトルが、 Floss or Die で、歯周病を治療するのを選ぶか、死を選ぶかという歯周病と心血管系疾患の関係を扱った内容のものでした。

原因として考えられたのは、歯周病源菌が体内に入り込み、血液にのって運ばれ、体の他の部分に血栓を作るという推論でその後も、アテローム性動脈硬化症や心筋梗塞といった心血管系疾患と歯周病との関連性を扱った研究が多数寄せられました。統計学的に重度の歯周病患者は、心血管系疾患になる確率が健常者の 1.5-3 倍であることが報告され、以後、生物学的に、臨床的に、微生物学的に研究がすすめられてきました。

賛否両論寄せられましたが、総合的に解釈すると双方の病気に何かしらの関係はあるようですが、直接的な因果関係の有無を見つけるのは、難しいようでした。しかし、2009年7月時点のアメリカ歯周病学会と心臓病学会が出した統一見解としては、この二つの病気間の関連性を強く疑うものなので、やはり、内科的な治療と歯科的な治療の両立が、大事なようです。

最新版

American Heart Association (アメリカ心臓病学会)が歯周病が直接アテローム性動脈硬化症などの心疾患を引き起こすとはいえないとの声明を出しました。

近年、心疾患患者の中で歯周病患者の割合が高いことから、歯周病と心臓病との関係が注目されていました。確かにその相関性は高いのですが、この二つの病気は、喫煙、肥満、加齢等で発生頻度、進行度が高くなることから、結果的に両者の相関関係が高いように思われていたようです。 兼ねてからその相関関係は、科学的に根拠が少ないことが一部の研究者に分かっていた事ですのでとりわけ新しいことではないのですが、

最近の一部の歯周病専門医でない先生の行き過ぎた解釈に一石を投じるものです。

もちろん、咀嚼は、消化活動の一番最初に行われる大事な機能なので歯を残すために歯周病を治療をすることが大事なことには変わりがないのですが。 

 

呼吸器疾患

歯周病原菌や院内感染によって口の中に住み着いた肺炎を起こす菌を持続的に口から肺へと吸入している可能性から、研究はすすめられました。

現在のところ、歯周病と肺疾患の関係を示した、決定的な証拠は、見つかっていませんが、その疑いを示す研究結果もありますので、歯周病治療としてのお口のクリーニングは、推奨されます。

 

骨粗鬆症

歯周病と骨粗鬆症との関係を示した研究は、多数あり、骨密度の低下により、歯がなくなる可能性は、高いようです。骨粗鬆症治療薬の服用やカルシウムの摂取により、歯周病の進行が遅くなるという研究も発表されています。

あくまでも、歯科医師による歯周病治療と併用するのが条件ですが骨粗鬆症の治療は、歯周病治療にもいい影響を与えるようです。しかしながら、歯周病治療の中には、外科的治療が必要なものもあり、ある種の骨粗鬆症の治療薬は、外科的治療後の治りを阻害するものもあります。

よって、どういった骨粗鬆症の薬をいつごろから飲んでいるのかを正確に歯科医師に伝えることが大事です。

HIV

HIV感染症は、感染した後、一定期間の潜伏期間を経てから症状(エイズ)を表します。 最近の研究では、歯周病原菌による刺激によってHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が再活性化されることが報告されました。

心血管系疾患と同様に、歯周病原菌の影響が全身に及ぶ可能性を示すものです。 

前立腺炎

歯周病と前立腺炎との関連を指摘している論文が発表されています。

前立腺炎の治療を行った患者さんから前立腺炎の度合いをしめすPSA値の測定と同時に歯周病の検査を行ったところ、PSA値が特に高い方は、歯周病を患っている方が多いことがわかりました。

つまり、歯周病は前立腺炎を悪化させる可能性があるということで、今後の研究、発表に注目していきたいものです。 

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